【商品説明】
数ある沖縄の染織品のなかでも、いちばん広く人々に知られ愛されているもののひとつ「紅型染め」は、長い歴史の中で様々に変化し、その時代ごとの花を咲かせ続けているように思います。
たとえば10〜20年くらい前、赤坂の草月会館などで沖縄の染織品の展示会が大きく開催されていた頃は、街でお召しになっても馴染むようなあまり色合いの強くないものが好まれ、地色も少し渋い小豆色やグレーを使った作品がよく見られました。
最近ではもう少しクリアな色使いが人気で、淡いブルー系や生成りの地にパステルカラーに近い色使いの帯やお着物も見られるようになりました。
身に着けるものでも色のブームというものがあるように感じられます。
時代によって変化していく部分と、長く続いた伝統を守りながらあまり大きく変化しない部分の両方を併せて持っている事が他の染織品との違いと言えるのではないでしょうか。
そしてそれが底に流れている琉球染織の文化なのかもしれないと思います。
先日も日本民芸館の「沖縄の工芸」展示の会でも、とても珍しく貴重な紅型の資料が驚くほどたくさん展示してあり、時間が経つのも忘れて閉館時間までずっと拝見していました。
紅型のルーツのような図案が宮古上布や八重山上布などの苧麻や芭蕉布に染められ、草花や鳥や蝶々たちが色とりどりに細やかに描かれていて、その素晴らしさに目が釘付けになりました。
いちばんの驚きは桐板(トンビャン)の生地に染められたものを数点、間近で観られた事です。
その昔、昭和10年代に沖縄を訪ねられ、こんなにも素晴らしい染織品に出合われた柳宗悦氏や芹沢_介氏、鎌倉芳太郎氏は驚きと共にどんな事を思われたのでしょうと思いを馳せてみました。
話は変わりますが「何年も前から好きな色の紅型の帯がない!」という事で、チャレンジャーでもある私は、他のお店にないような柄選びと色出しをして、作者に驚かれながら色々な帯地を染めていただきました。
それが意外とご好評をいただき、嬉しく思っていました。
今夏は天候の不順などの理由から、城間さんの作品は間に合ったのですが、玉那覇有公さんの作品はシーズンに間に合わず残念でした。
作業工程によって、程良い乾燥と湿度がなければ紅型は綺麗に染まらないそうです。
先日、玉那覇有勝さんとお会いする機会があり、「来年の夏にはきっと良い作品をお願いしますね」と念を押させていただきましたので今から楽しみです。
そんなこんなのお話の中で、近年のクリアでカラフルな色使いの淡色のお着物に合いそうなモダンな紅型も大好きなのですが、やはり民芸館であれほどレベルの高いルーツ的な紅型を目にしてしまいますと、その魅力もまた別物だと思いました。
そんな意味でも古典の良さを持った可愛い紅型のお着物が入荷いたしましたので、ご紹介させていただきます。
黄色味の強い茶・黄橡色の地に檜扇のような貝が海藻を身にまとっている形が、編み笠のようにも見える図案です。
大小の梅の花も散らされています。
小さな模様には、ひとつひとつに綺麗な中紅色と紺瑠璃色で隈取の暈しが加えられ、可憐なお花が咲いているようです。
古紅型の布地を見ているような印象もあり素敵です。
城間栄喜氏の作品集にこれと非常に近い図案があり、紅型の宗家でもある城間家の図案のひとつの流れを汲むものなのかと思いました。
今回は偶然にも色違いと思われるようなお着物も入荷しております。(下段画像をご参照ください。)
同じ流れを汲む図柄のものが長い時間を経てまた同じ場所で出合うという不思議な事があり驚きました。
是非この機会に、古い資料などと一緒にご覧くださいませ。
お仕立替え済。
黄橡色(きつるばみいろ)は「#806336 WEB色見本 原色大辞典」を、
中紅色は「#80334d WEB色見本 原色大辞典」を、
紺瑠璃色は「#0d2b4d WEB色見本 原色大辞典」をご参照下さい。 |