【商品説明】
雪国の、音さえも吸い込んでしまうような静かな深い雪の中でその素晴らしい作品は生まれます。
春待ちの心に咲く花の姿、白い雪を照らす月灯り、広く澄んだ夜空に道しるべの様に光る星たち、清らかに渡る風といった「雪月花風」をテーマに自然の中の光や草花や風を作品の中に織り込んで、着る人の心にとどけます。
そして包をほどいた時そこには自然のロマンが美しく広がります。
極細の縮の糸からなるもの、上質な細い麻の糸からなるものの違いはありますが、寄り添う藍色のラインの繊細さと白とブルーの絶妙なハーモニーによって、線の動きを変えながら作品のテーマごとに美しく表現されます。
その細やかな線の集合に躍動感が生まれ、活き活きとした作品に生命力があふれています。
「雪中に糸となし、雪中に織り、雪水に洒ぎ、雪上にさらす。
雪ありて縮あり、されば越後縮は雪と人と気力相半ばして名産の名あり、魚沼郡の雪は縮の親といふべし」
鈴木牧之『北越雪譜』より
「不死鳥」
第54回日本伝統工芸展入選作品。
こちらの作品は新潟県中越地震で被災された後、復興を願って蘇るイメージでつくられた作品です。
先日樋口先生に当店へお立ち寄りいただきお話をさせていただきましたが、色々な事に積極的でまた大変エネルギッシュな方でした。
また地物のビールやお酒のお話がお好きで、楽しく語られる様子にとてもチャーミングな面もあり、高潔な印象のある作品から抱くイメージとはまた少し違っていて、良い意味で驚かされてしまいました。
被災当時の大変な思いをされたお話には心が痛みました。新潟の雪の多い地域の方々は日頃から雪対策に関してもご近所で協力しあっているので、震災の時もお互いに力を合わせる事がスムーズにできましたというお話を聞き、なるほどと感心しました。熊本での地震の後でしたので特にその話題になり大変ご心配されていました。
こちらの作品は肩口から裾に向けて細い縞の集合が細くなっていきます。
この形は上昇するイメージだそうで、不死鳥が空高く飛びたっていく様子を表現されたのかと思いました。
所々に四角をトップにした濃い藍の線が散らされ、煌めく流れ星の様にも見えます。
裾周りに白い空間がとられている事による清涼感と、絵羽附けの柄配置ならではの高級感が感じられます。
他では、特に小千谷縮では見る事のない個性あふれる作品です。
これほどの繊細な麻の織物から活き活きとした生命力のようなものを感じられる事に感動します。
【樋口隆司 プロフィール】
1948年 新潟県に生まれる
1989年 「世界の麻」展
1990年 第37回日本伝統工芸展入選その後も各賞を受賞
1991年 松屋銀座にての個展をはじめ各地での個展を開催
2004年 新潟県中越地震復興祈念個展「星に願いを」織展
2006年 第1回新潟県伝統工芸展優秀賞受賞 「フェニックス」
2007年 第54回日本伝統工芸展入選 「不死鳥」
2016年 第10回新潟県伝統工芸展正会員賞受賞 「はつなつの風」
2016年 「小千谷縮・軌跡」展 |