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「虎の尾に蝶々」京友禅訪問着
人間国宝　羽田登喜男作

一年の中でお着物の装いの方を目にする機会が一番多く、何となくお着物への意識も高まる新年に、この季節に相応しい、それぞれのジャンルでも最高クラスの部類と言えるような素晴らしいお着物を何点かご紹介させていただきたいと思います。
こちらはそんな中でも一段と華やいだ可憐な美しさのある、人間国宝・羽田登喜男氏の訪問着の作品です。
羽田登喜男氏の作品の代表的なものとして鴛鴦の図柄をご存知の方は多いと思いますが、個人的には作品数は少ないながらも草花がモチーフの大作が大好きです。
その写実性は本物より瑞々しく、繊細な描写と、そこに吹く風を感じられるような躍動感のある構図にいつも心をうばわれます。
甘すぎず、でも豊かさを感じられる薄紅・宍色の地に、たなびくように描かれた色とりどりの虎の尾の花、そこに遊ぶモンシロチョウとモンキチョウの可愛らしさがたまらなくメルヘンな世界を繰り広げてくれています。
重なり合い、咲き誇る花は白を中心に鶸色と深縹色、そして濃紅色が挿され、柔らかい色調の中でとても上品なアクセントになっているようです。
地の宍色にも点描画の様に白が散らされ、ニュアンスのある色となっていて、さらに友禅の葉の模様のすぐ後ろの背景にも無地部分が残され、シルエットの様な奥行きを出されています。
細やかな工夫がこんなにもひとつの図柄を活き活きとしたものとするという事と、そのデザインを実現するためには手間と時間を惜しまないといった心意気が感じられ、改めて作品の素晴らしさに感動しました 。
そんな事はまるで関係がないように、風が渡る春の野の清々しい空気が伝わって来るような素敵な軽やかさがまた魅力です。
実際にお羽織りいただきますと、裾から巻きあがる様に虎の尾の花が咲き、とても美しくすらりとしたスマートな気品のある着姿となります。
またこの色の組合せは羽田登喜男氏作品ならではのものですので、作品の醍醐味を十分感じていただける事と思います。
春先からのフォーマルのご予定がおありの方には是非ご覧いただきたいおすすめの逸品です。
お仕立替え済。
宍色は「#efab93　WEB色見本　和色大辞典」を、
利休鼠色は「#888e7e　WEB色見本　和色大辞典」を、
淡萌黄色は「#93ca76　WEB色見本　和色大辞典」を、
濃紅色は「#a22041　WEB色見本　和色大辞典」を、
深縹色（こきはなだいろ）は「#2a4073　WEB色見本　和色大辞典」を、
鶸色は「#d7cf3a　WEB色見本　和色大辞典」をご参照下さい。
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