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「松に尾長鳥と波図」京友禅経絽訪問着
田畑喜八作

特別にお誂えをしたと思われるような夏の個性的なお着物が何点か入荷いたしましたので、順番にご紹介させていただきたいと思います。
こちらはその中でも最高クラスといえる京友禅の大家、五代目・田畑喜八氏の素晴らしい作品です。
少し紅を挿したような鳥の子色の経絽の地に、大胆な構図で裾からは勢いのある調子で波が、肩口には松の枝にとまって美しい長い尾を垂れて羽を休めているような尾長鳥のペアが描かれた訪問着のお着物です。
鳥の子色に藍の濃淡が清々しいほどに冴えて、藍の濃淡がこんなに美しく感じられる事に改めて驚きます。
特に尾長鳥の胸の部分の明るい紺碧色の藍、松の木肌の雰囲気を表現されたしっかりとした力強い幹の青藍の藍、そして豊かな波の線や波頭など、藍色の濃淡だけでもこんなにも表情豊かで見ていても飽きの来ない素晴らしい魅力にあふれています。
構図から江戸時代の衣装の雰囲気が醸し出されていますが、波頭の形も江戸期の意匠に見られるもので、また肩口に描かれた見事な尾長鳥も田畑コレクションの中の「木樹に尾長鳥文様」（江戸前期）に取材されたもののようです。
20年位前に京都の��島屋さんで「田畑コレクション」の展示があり、見に行かせていただきました。
よく美術館で拝見するような、古い時代ものがこんなにもたくさん集められて保存されてという事実よりも、どれをとっても現代でも新鮮で驚かされるほどの優れた意匠や色使いである事と、そのセンスの良いセレクションに驚かされて、相当の時間魅入ってしまい、その後も何度も図録を見た事を覚えています。
夏のお着物でここまでの大作にはなかなか出合えませんので、クラスの高いフォーマルのお着物をお探しの方には是非ご覧いただきたい素晴らしい逸品です。
鳥の子色は「#ffefcf　WEB色見本　原色大辞典」を、
青藍色は「#213f66　WEB色見本　原色大辞典」を、
紺碧色は「#2e7499　WEB色見本　原色大辞典」をご参照下さい。